桜姫紀
竜と扉の隙間から見えたソレ。
どくん、どくんと自分の心臓が波立つ。

「お母さん・・?お兄ちゃん・・?」

指先が震える。
ねぇどうして?どうして、
あんなに赤に染まってるの・・・?

お兄ちゃんとお母さんは床にたくさんの血を流して転がっていた。

「集団の強盗だったらしいわよ。」
「何だか妙にその家のこと知ってたらしわ。」
「・・しっ。」

妙に、家のことを、知っていた・・・?
もしかして、朝私がしゃべったあの人が・・・。

「私の、せいだ・・・。」

「葵・・・?」

「私が、私がしゃべったせいで、お母さんたちは・・!!」

足もとがすくむ。
目眩がする。

自分が一人は嫌だ、って言ったのに。
自分のせいで、自分のせいで

自分を一人にしたーーーー。

ごめんなさい、お母さん。
ごめんなさい、お兄ちゃん。

「私が、殺したんだ・・・。」

「ちがう!」
< 31 / 73 >

この作品をシェア

pagetop