桜姫紀
そういって竜が私を抱きしめる。
あたたかい・・・。
いつか、お母さんが抱きしめてくれたのと
同じ、あたたかさ・・・。

「悪いのはお前じゃない。強盗だ。」

「でもぉ・・でもぉ・・。」

「俺がお前を一人にさせない。」

力強い、言葉。

「なぁ、俺らの仲間に入れてやる。」

仲間・・・?

「お前の家族、になってやる。」

「いいよぉ・・。だってみんなみんな、」

私を残して死んでいく。

顔を知らないお母さんもお父さんも。
お兄ちゃんも、お母さんも・・・。

「絶対に死なない。」

「ほん、とに・・?」

「そうだ。絶対に・・・。」

「・・・っ、うあわぁぁぁぁん!!!」


激しく、泣いた。
竜の胸の中で。
何も言わず竜は抱きしめてくれて・・・。


ガラス細工は割れてしまって
初めてその本質が出る。
それは人と同じ。
悲しい時、辛い時。
その時こそはじめて
人の本質がわかるんだーーーーー。


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