桜姫紀
火事?

「敵襲だーーー!!」
「怪盗夜行だーーーー!!」
「火をつけられたぞ、水だ水ーー!!」

どくん、どくんと私の心臓が鳴る。

慌しい走り回る音が聞こえる。
ここで火事が起きてるのか。

このまま死ねるかな・・・。

鼻につく焦げ臭い匂い。暑い。
本当に、燃えてるんだ・・・・。
物が簡単に燃えるように、人も簡単に燃えるのかな?

フッと私は微笑んだ。

もう終わりだね。霞は逃げられるよね。
ふと、霞の泣いた姿が脳裏に浮かんでは、消える。
私が死んだことを知ったら貴方は泣く?

でも。

月日がたてば時間という重みによってだんだんといなくなった人は忘れられていく。
母上や父上がいい例。
幼かった私は2人が死んでわんわん馬鹿みたいに泣いて。
このことは絶対忘れないんだろうな・・・
そう、思ってた。

だけど、実際はちがう。
たとえ誰かが死んでも時間だけはめぐるように動いて。
時間がたてばたつほど古い傷は治るように、その悲しみも癒えていく。

煙が回る。暑い。

「さようなら・・・。」

黙って、私は目をつぶった。

だけど、そう思った時に襖が開いた。



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