あの日の僕ら
そして私の頭をくしゃりと撫でた。
「いいよ。全然。」
そして最後に頭をぽんぽんっと二回軽く叩いた。
私は触られた頭を自分でも触って嬉しくなった。
「ねッ、優!教室まで一緒に行こう?」
私は 軽く笑って優に話かけた。
「べつにい―けど?」
優は そう言ってくるりと背を向け歩きだす。
そして 私も追いかけようとするんだけど・・・背が高くて足も長いから中々追いつけない。
一人で頑張っていると 急に優の歩調はゆるくなり私の隣にきた。
「・・・ありがとう。」
「別に。い―よ!」
優は また笑って答えた。
私は 今日だけで どれだけ優の笑顔を見ただろう。
「何かさ。私・・・優に始めて会った気がしないんだ。」
「え・・・?」
優は一生懸命に首をひねらせ 考えていた。
「いや、私も優の事は始めて知ったんだと思うんだよ? けど・・・なんか優の笑顔を見ると安心するの。だからッ―」
私は 思っている事を全て話し、隣にいる優を見た。
「そッか。じゃあどっかで出会ってんのかもな。」
優は私に優しく笑いかけた。
朝 出会ってから変わらないあなたの笑顔。
その笑顔を見たら私は 幸せな気持ちになる。
「そうかもねッ」
私は優にまた話かけた。
どこに住んでいるのか。
メールアドレスとか。
家族構成。
部活は何をやっていたとか。
互いを知るために 3組までの長い廊下で沢山話あった。




あなたの笑顔で何もかも変えてしまう。
私のいる世界も全て。
同じ時代を歩いている私たち。
“また会おう”と言って 止まってしまった時間。
それが今 動き出した気がした――。
< 3 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop