僕タチの旅
びっくりして振り向くと、真剣な顔の速人。
「一目惚れなんだ。俺と付き合ってくれない?」
と言われて、またびっくり。
顔を赤くしながら、必死で話す速人を見てると、すこし胸が高鳴るのを感じた。
でも、この人、陸上部なんでしょう?
あの男女交際禁止の陸上部でしょう?
しかも、エースだよね、確か。
駄目だよ。付き合えない。
第一、この人のことよく知らないし。
『ごめんなさい…』
今度こそ離れようとすると、
「じゃあ、友達になってくれない?
俺、早瀬さんに好きになってもらえるように頑張る。」
好きなってもらえるように頑張るって。
諦めないのね。
いいのかなぁ。陸上部なのに。
でも、友達なら。
悪い人じゃなさそうだし。
『じゃあ、友達ってことで。』
「マジで!?やったぁ!!」
そう言って笑った顔が輝いてて、また胸が高鳴るのを感じた。
今考えれば、この時から私は彼の笑顔の虜だったのかもしれない。