僕タチの旅

気が付いたときには、保健室のベッドの上で、春陽が心配そうに覗き込んでいた。

「平気?気分悪くない?」

私が微笑むと、春陽は安心したように笑って、

「良かった。あとで唐沢くんにお礼いいなね?」

と言った。

『なんで…?唐沢くん…?』

私の声は震えてたと思う。

「覚えてない?藍のこと保健室まで唐沢くんが抱えて運んでくれたんだよ。」

それを聞いた瞬間、私は駆け出してた。

春陽が何か叫んでたけど、吹っ切って駆け出してた。



たた、速人に会いたくて。

陸上部の部室に向かって走っていた。





私のこと嫌いになったんじゃないの?


私、速人のこと好きでいてもいいの?



そんなことばかりが頭に浮かんでくる。






部室に行くなんて、なんて迷惑な女。


ねぇ。
でも、今じゃなきゃ駄目な気がしたの。

今、伝えなきゃ一生伝わらない気がしたの。
< 26 / 33 >

この作品をシェア

pagetop