僕タチの旅
速人が何も言わないから、不安になって顔を見ると、少し顔を赤くしながら、私の大好きな笑顔で
「ありがとう。」
って言ってくれた。
少しの沈黙のあと、
「俺、陸上部辞めるから。そしたら、ちゃんと付き合って?」
速人の突然の言葉に、今度は私がびっくりしてしまった。
『駄目だよ!そんなの…』
「でも、陸上部にいる限り、普通に付き合えないんだぞ?」
分かってる。
速人は私のことを思っていってくれてるんだって。
でも、辞めちゃ駄目だよ。
だって、速人は陸上好きでしょう?
今まで努力してきたんでしょう?
『駄目だよ、辞めちゃ。
普通に付き合えなくてもいいよ。唐沢くんが私のこと好きでいてくれるならいいから。
卒業まで我慢するから。
今は陸上頑張って。私、唐沢くんが走ってるところが一番好きだよ。』
私の精一杯の強がり。
本当は普通に付き合いたいけど、それじゃ速人のためにならないから。
「ありがとう。本当にありがとう。」
そう言って速人は笑う。
私は、何があってもこの笑顔を守ろうとこの時誓った。