僕タチの旅
非常階段
藍side
本鈴が鳴る直前に教室に飛び込んでくる、速人。
いつもの朝の光景。
速人が私を見ると、微かに白い八重歯を覗かせて微笑んだ。
デート出来なくても、たまにしか二人で話せなくても、速人がこうして私に笑いかけてくれれば、満足。
それだけで、私は幸せ。
速人が席に着くとすぐに担任がやってきて連絡を始める。
今の時期になってくると受験の話ばかり。
正直うんざりしてくる。
ペンを弄びながら、外を眺めていると、机の上に一枚の紙が差し出された。
目線を戻すと、それは私が出した進路調査書。
それと、目の前には難しそうな顔をした担任。
いつのまにか連絡は終わっていたらしい。
明らかに面倒なことに成りそうな雰囲気。
はやく切り上げたくて、次の授業の教科書を出しながら、
『何か問題でもありましたか?』