執事と共に雪遊びを。
点滴の針を抜いた彼は、飛ぶような速さで駆け寄ってきた。


「大丈夫ですかっ」


黒目がちの瞳に涙を滲ませ、震えている恵理夜のその肩を、強い力で引き寄せられた。

細身ながらも、力強い肉体を間近で感じた。

薄手の寝間着からのぞく鎖骨ははっきりと浮き出て、上下する胸から春樹の呼吸を感じた。


「春樹、今すぐ退院しなさいっ」


恵理夜は、震えながらも良く通る声でそう言い放った。


「今すぐ退院して家に帰るのっ」


本気で怯える恵理夜に、春樹は困ったように眉を寄せていた。
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