桜色の初恋
二日目
「お前さーちょっとは器用に出来ねぇのかよ?」
持っていた試験管を必死に洗いながら“桜”と名乗る生徒は後ろを振り返った。
黒髪ストレートの長い髪がゆさっと後ろに流れる。
「だって、試験管、ちゃんと洗ったことないんだもん」
「お前ななに小学生みたいな言い訳してんだよ。
家でかぁちゃんの手伝いとかしてないのか?」
「だって家では試験管なんて洗わないもん」
「ったく、ほんとガキみてぇだな」
“あたしにもなにか手伝わせてください”
洗い物の最中にそんなことを言ってくるからやらせてみるか、
なんて思ったのがそもそも間違いだった。
「大体なー。試験管二つも割るかよ」
ったく。