幕末恋模様~時を越えて~
四章~池田屋事件~
初任務
元治元年四月以来、新選組は多数の長州人が京都に潜入しているとの情報を得ていた。
監察部を動員し、探索を強化していた結果、
五月下旬頃に士調役兼監察の山崎烝・島田魁らによって
四条小橋上ル真町で薪炭商を経営する
枡屋喜右衛門の存在を突き止め会津藩に報告した。
元治元年六月五日、夜明け前。
桝屋喜右衛門の邸宅前に隊服を身にまとった一番隊小隊と三番隊が静かに集まっていた。
泳がせておいた桝屋喜右衛門を捕縛するためだ。
「初任務がいきなり捕縛…。」
眠そうな目をこすりながら気だるそうな声を出しながら杏里は言った。
「起きろ、南。おまえがしっかりしなければどうする。」
ピシャリと斎藤が言い放った。
コンコン。 コンコン。