幕末恋模様~時を越えて~
一章~江戸へ~
ニ〇××年、某日。
大学の受験にも合格し、
後は高校の卒業を残した女の子がいた。
彼女の名は【南杏里】。
幼いころより剣道一筋で育ち、
高校でも剣道部に所属。
顔立ちも中性的で性格は男勝り。
普段は言葉使いが少し荒いが、
根は優しい女の子で意外と乙女な一面もある。
大会では賞を総ナメすると言いった実力の持ち主。
ある日、学校からの帰り、
ふと何かに誘われるように神社に足を踏み入れた。
これから杏里の身に起きることは誰も知る由もない…。
気がつけば境内(けいだい)の奥まで来ていた。
周りは誰一人いなくて静かすぎるこの空間に嫌な予感がした。
自分が関わってはいけないような何かが
この神社内にあると感じ取っていたからだ。
早く戻ろう…。
嫌な気配がする……。
神社の蔵を横切ろうとした時、
蔵の中からカタカタと何かが動く音が聞こえた。
無視して通り過ぎれば良かったのだが好奇心が働いてしまった。
人か?
いや、人の気配じゃないな。
だったら何だ――?
そっと戸に手をかけ勢いよく開けた。
中にあったのは人ではなく、古い鏡。
少し埃がかぶっていて太陽の光が当たり鈍い光を放っていた。
鏡……。
なんでこんなところに鏡なんかあるんだよ。
不思議に思い鏡へと手を伸ばした瞬間、体中に電気が駆け巡った。
バチッ!
「………痛っ?!」
とっさに手を引っ込め鏡を見やる。
何だ、今の……。
静電気にしちゃ強くないか?
もう一度恐る恐る鏡へと手を伸ばす。今度は何も起こらない。
なんだ、やっぱさっきのは静電気だったんだ…。
何も起こらないのをわかると鏡の埃(ほこり)を拭き取った。
そして杏里が鏡の表面に触れた瞬間鏡は強い光を放った。
「なん、だよ!この光!」
ぐにゃり。
鏡の表面が歪(ゆが)みだす。
光は強さを増しながら杏里を包み込む。
「誰k……――!!」
光が弱まった時にはもう杏里はいなかった。
蔵の中にはまた静けさが戻る。