幕末恋模様~時を越えて~
池田屋事件
―――亥の刻(午後十時)。
三条小橋西にある旅籠「池田屋」の前に浅葱色の羽織を着た彼らは居た。
近藤隊が到着していた。
コンコン。
緊張感の中近藤は宿の戸を叩く。
「主人は居るか?」
「へ、へぇ。」
出てきた宿の女将だろうか、いそいそと主人を呼びに戻った。
「我ら会津藩お預かり新選組である!今宵、宿内改めさせていただく!」
呼ばれ出てきた主人はだんだら模様の羽織をみて顔を引きつらせた。
そして主人は逃げるように階段を駆け上り出せる限りの声で叫んだ。
「お、おニ階の皆様!御用改めにございます!」
主人のその言葉で浪士達がニ階にいることが確定した。
「さっさと片付けて帰ろうぜ!」
杏里がいち早くニ階へと続く階段を上る。
そのあとに、近藤、沖田と続いて行った。