幕末恋模様~時を越えて~
五章~また会う日まで~

別れ



* * *
池田屋襲撃後
総司が倒れたと聞かされた土方さんは鬼の仮面の面影も見せないで
総司の元へ駆け寄り生きていることに安堵のため息を漏らした。
ちょっと涙が出ていたことは黙っておこう。

そんな歴史的一部に参加した翌日のこと。

「結構手ひどくやられたなぁ…。」

平助は額を斬られて血が止まらなくてまだ熱を出して寝込んでいるし、
新八は左手の負傷だけで済んだが傷はひどい。
総司は、部屋で安静に寝てるはずなんだけど…。
さっきから見当たらない。


「どこにいったんだよ、もう!怒られるのは私なんだぞ?!」
土方さんから総司の監視役を言いつけられていたのに、いないってばれたら大変なんだって!


廊下を悶々としながら歩いていると急に腕を引っぱられ部屋に引きずり込まれた。


「総司、おまえ!何処にいたのさ!捜したんだよ?」
「ごめん、ごめん。ねぇ、ちょっと散歩に行かない?」


苦笑しながら提案する。


「駄目に決まってんだろ。ほら部屋戻って。自分が労咳なんだってこと忘れてない?」
「ちょっとだけ、ねっ?」


駄々こねる子供かあんたは。
どうしようかなぁ。
でも、気分転換は必要だしな。


「しょうがない!秘密だからな!」


沖田の要望で杏里はしぶしぶ女物の着物に着替えて二人で神社へとやってきた。
ここへ来るまでお互い黙ったままだった。
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