幕末恋模様~時を越えて~
試合
そーいや、さっき視線がものすごく刺さってたんだよな。
杏里は壁の方に歩いて行き覗いていた三人に声をかけた。
やっぱりこの人たちか。
原田、永倉、藤堂が壁の後ろに隠れていた。
ほんと仲がいいんだ。
「道場に来なよ。土方さんの負けるとこみたくない?」
にっこりとそう声をかけて杏里は土方の後を追った。
「すっげー自信。」
声をかけられた三人は呆然(ぼうぜん)と立っていた。
そんな三人に沖田が話かける。
「ほら、こんなとこに突っ立ってないで見に行きましょう。
土方さんの負けるとこみたいし。」
「お前ほんと土方さんにあたるなぁ。」と苦笑いを浮かべる原田。
「なぁ、総司。俺達気配(けはい)隠してたんだが、なんでバレたんだ。」
新八が目を丸くしながら呟く。
「あの子だいぶ手(て)練(だ)れてますよ。
さっきだって平助達の気配を一瞬にして
感じとってた。悔しいけどあの子の実力は俺達と同等かそれ以上。」
「なんでそんなことわかる。」
「だって俺の突きをかわして頬にかすり傷までつけられたんですよ?」
軽いため息をついて、ほらね。と言って傷を見せる。
「まぁとにかく行きましょ。彼女の剣は見て損じゃないです。」
沖田の促(うなが)しで四人は道場へと向かった。