奏でる愛唄
「それより、収録の時に言ってたあれってなに?」
詩稀が言った“唄と同じステージに立つ”という台詞
どういう意味だったのかと尋ねた
「言ったろ?俺は唄のこと諦めないって。だから唄に近づくには同じ歌手っていうステージに立つ必要があった」
詩稀は私の為に歌手になった
ただでさえ俳優の仕事は多くて忙しいのに……
「詩稀……そんなに無理しなくてもいい。私は誰も好きにならない。もちろん詩稀のことも」
詩稀は一瞬暗い表情を見せたが
すぐにいつもの笑顔になり
「俺が諦め悪いの知ってるだろ?」
それだけ言って次の仕事あるから私に背を向け歩きだした