奏でる愛唄
「助けてくれてありがとう」
唄はそれだけ言って走って行こうとした
だから思わず
「な……に?」
手を掴んでしまった
「あ……何でもねぇ」
手を離さないといけない
分かっているけど離すとこいつが遠くに行きそうで怖い
「永久……」
「わりっ……先戻ってろ」
スルッと手から抜けた細い手は俺を求めていない
詩稀がいいんだ
分かってはいる
けど身体は正直に唄を求めている
馬鹿みてぇ
ハアとため息混じりに笑った