こんな娘で、ごめんね。
父は、一歩家を出れば、別人になる。


人に愛想を振り撒き、ヘコヘコしながら、お世辞を言ったり、笑顔を見せる。



父は、耳が聞こえずらい母にも優しく接し、あたしにも思いやりのある言葉をかけてくれたりした。



家では、口数も少なく、仏頂面なのに、外では


『いいお父さん』と言われるのだった。



傍目からみれば、いいお父さんに、いいお母さん。


そして


小さい頃から
『あぁしろ』『こうしろ』と、


挨拶にしろ、礼儀作法にしろ、全てのことを叩き込まれ、出来ないと怒鳴られ、口答えをすると容赦なく、手が飛んできた、そんな環境に育ったあたしは、



外では『親の躾がなってる、しっかりした娘』と言われた。



うそだ。



あたしは、しっかりした躾の出来た娘じゃなく、怒鳴られたり、殴られたりするのが嫌で、恐怖心からしてただけ。



父は、自分の評価をあげたくて、人から褒められたいが為に、いいお父さんのフリをしていただけ。




そんな風に、いい家族の演技をし、仮面をつけてたあたしたち。



本当のあたしたちは、めちゃくちゃに家庭崩壊していた。



< 11 / 68 >

この作品をシェア

pagetop