こんな娘で、ごめんね。
『泣かなくて偉いね』


『君は、強い子だね』



大人達は、大きな右手で、幼いあたしの頭を撫でた。


そんなんじゃない。



泣かないんじゃない。
泣けなかっただけ。



強い子なんかじゃない。


強がることでしか生きれなかっただけ。



あたしが欲しかったのは、そんな言葉なんかじゃない。



あたしは、肩に力を入れ、構えて生きることしか出来ない、不器用な人間だった。


憎しみも、悲しみも、辛さや嫉妬も、自分の感情を殺して、



今日が楽しければいい。



そうやって、いつも自分をだまし、自分から逃げて、弱くて、情けない。ちっぽけな自分から、目をそらし続けた。





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