こんな娘で、ごめんね。
不登校ができなくなった、あたしは、渋々、学校に行くようになった。



『お前なんて、死ねばいいのに。お前が死んだって、誰も悲しまないし! 泣いたって、誰もお前なんか助けねーよ。バーカ!』



ある放課後。掃除の時間が終わった時、教室に戻ってくるなり、あたしはそう言われた。



ペッと、顔に唾をかけられ、唾液の臭いが鼻につく。


その男子は、おどけて笑った。あたしが、捕まえようとしても、笑いながら逃げていく。


教室には、あたしをまるで、汚いものを見るかのような、冷ややかな目線をする子もいたし。


見て見ぬふりをする子たちもいた。



ハイエナみたいだ。よってたかって、ひとりぼっちのあたしを食い物にする。



強いものに媚びを売り、強いものの後ろで威張り、金魚の糞みたいな奴。


ひとりじゃ
何もできないくせに。



あたしは、その男子の唾を右手で拭った。




「ねぇ。なんで、イジメるの? あたし。なんかしたの?」



あたしの問いかけに、男子が答える。




『は? 楽しいからだよ。お前が苦しむ顔も、お前が痛がる姿も。見ていて、笑えるからだよ。お前の母さんも笑えるしな! え゛!? 聞こえないんですけどー。あははははは。ダッセー』



おどけながら、笑う男子を見ながら、あたしの中で、冷たいものが落ちた。




「おぃ」


あたしは、そう口にすると、近くにあったイスに手を伸ばした。



「てめぇ。何が、……何が、そんなにおもしれぇーんだよ!!」




あたしは、イスを持ち上げて、その男子にめがけて、思いっきり投げつけた。






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