こんな娘で、ごめんね。

家に帰ると、
急に雨が降ってきた。


トタン屋根のあたしの家には、バラバラバラッと小石が当たるような音がしていた。



｢お母さん。イジメって、どう思う？ あたしが、イジメられてたら、どうする？ 転校させる？ 何をしてくれる？』



あたしは、真新しいシューズに、油性ペンで[沢村]と書きながら、聞いてみた。


あたしの微かなＳＯＳのつもりだったのかもしれない。



『転校はムリやろな。あのお父さんが、まず動かへんやろ。家族に対して薄情やさかい。イジメがあっても、何もしてくれへんやろし』



｢じゃぁ、お母さんは？ お母さんは、あたしに何してくれる？ 助けてくれる？｣


『お母さんは、どうするやろか。きっと、負けたらあかん！ 立ち向かえ！ って言うかもしれへんな。


イジメは、イジメる子ばかりが悪いとも言い切れんし、イジメられてる方も悪いんとちゃうかな。強かったら、イジメられへんやろし。子供のケンカに親が出るもんとちゃうしな…』



｢ふうん｣



簡単に、言うんだなって思った。



安易に、立ち向かえ！ とか、負けるな！ とか。



強かったら、イジメられない。弱いから、イジメられるの？



イジメられてる子が、弱いからいけないの？



イジメは、子供の些細なケンカなんかじゃないのに…。



だったら、
強くなってやろうと思った。




あたしは、
あたし自身を守る。



傷つけられる前に、
あたしが傷つけてやる。



この日。



残っていた、あたしの中の何かが、全部。大きな音をたて、崩れ落ちた−−−…