こんな娘で、ごめんね。
Episode 4
ある日。


家に帰ると、
リビングで、母がうつむきながら、呟いていた。


『人生に失敗した』




母には、あたしが家に入ってきた足音は、聞こえていない。



あたしの存在にも気付かず、母は、そのまま独り言を続けた。



『旦那は、薄情モンで、家族に対して何もしてくれへん。あんなのとは、好きで結婚したんとも違う。32で、ウチは年やった。世間体に格好悪かった』




ソファーに座っている母の後ろを通ったとき、母は静かに言った。




『あの子も生まなきゃよかった』




−−−−…えっ。



あたしは、持っていた缶ジュースを床に落とした。






< 41 / 68 >

この作品をシェア

pagetop