Bautiful World ー真心を君にー
そこから私は執念深く少年に付きまとい、
少年が走ると私も走り、そして転び、泣く。
少年が溜息を吐いて無視する。
無言なまま歩いていく少年を見た私は、幼いながらも泣くのは無駄だと脳で理解した。
そしてなんとか泣き止み、また半泣きで少年のあとを付きまとう。
少年はもう無駄だと観念したのかもう走ることなどせず、少し早歩きで進んでいく。
私は一生懸命走りながらついていった。
そして着いた先は、天然理心流の道場。
少年は当たり前のように、「帰りました」と一言言って道場に入っていく。
私もそれを真似し、「か、帰りました」と一言言って少年の後をついていった。
道場は竹刀がぶつかり合うパン、パァァンという音がこだましていた。
少年を見た練習中であろう一人の男が、そばに寄ってきた。
「お帰り、惣次郎。なんだ、もうその年で女連れまわしてんのか?この女たらしめ。」
そういって豪快に笑った男は、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
不思議と嫌な感じはしなかった。
「違いますよ、勝手についてきたんです。」
そういって少年は自分は関係ないとでもいうように顔をそらした。
「まぁまぁ、そんなとがった言い方すんなって。嬢ちゃん、家はどこだ?おじさんが送って行ってあげるから。」