Bautiful World ー真心を君にー
「やっぱり知らねえか。美味しいぞ。黄色くて、頭が茶色くて、長方形で、何よりもすごく甘いんだ。」
熱弁する高杉の言葉を一文字一句聞き逃すまいとしきりに耳を傾ける空音。
長方形・・・?
黄色・・・
頭が茶色・・・
しかしどんなにがんばっても最終的に辿り着いた形態は、頭の毛が茶色い、ひよこだった。
「ひ、ひよこ・・・?!いやでも・・・」
「なら実際にその店に案内してよ。論より証拠、でしょ?」
空音の妄想がこれ以上有り得ない方向へと膨らむ前にと、栄太郎が高杉に微笑みかける。
「そうだな。やっぱり言ってばっかりじゃ信用してもらえな・・・っておい何で俺疑われてんだよ。」
「じゃあ行こうか。もちろん晋作の奢りで。」
「やったぁ!」
苛立ちを押さえ切れていない高杉をまるで無視しているかのように空音に微笑みかける。
空音は空音で、プレゼントを待つ子どものようにはしゃぐ。
「小五郎。行く?」
「ん?あぁ、まだやることがあるのでな。ここらへんで、宿に戻るとする。それと空音。」
今までずっと無言だった桂が、空音へと向き直る。
「新撰組には、気をつけるんだぞ。」
「新撰組・・・?」
「浅葱色にだんだら模様の羽織りを着た集団だ。そいつらを見つけたら、なるべく顔を見られないように気をつけて、平然を装え。決してこちら側からは近づくなよ。」