左目のマスカット味



お母さんは
スピリチュアル系、生徒カウンセラー、リンパマッサージ師とかの人の心を和ませる仕事をしてきた。


お父さんは
主に建設関係の仕事。
バスケ部だったお父さんの細マッチョな体にお母さんは一目惚れしたんだって。



お母さんは「優美」ゆうみ
お父さんは「浩大」こうだい

男の子が産まれたら「優大」ゆうだい
女の子が産まれたら「浩美」ひろみ

と決めていたそうだ。


あたしには兄がいる。
勿論名前は「優大」。

名前の通り、超優しい1つ上のお兄ちゃん。
同じ高校の先輩。

「2人目は女の子がいい」と思っていた。願い通り、産まれたのは「あたし」だった。

「あたし」は「浩美」になる予定だった



…しかし、緊急事態が発生。

ひとつめは
父方のばあちゃんが亡くなった事。

ふたつめは
双子を授かった事。


ばあちゃんが亡くなったのは午前5時半。

あたし達が産まれたのは午後5時半。


ばあちゃんはよく笑う人で、太陽みたく元気な人だったと じいちゃんに聞いた。


亡くなる寸前まで晴れてたのに、まるでばあちゃんが泣いてるかのようにしとしとと雨が降り始めた。

それはとても美しくて、今まで見たことのない夜明けだった。

それと同時にばあちゃんは眠るように亡くなった。

いつもはハンサムなじいちゃんが静かに涙を流す姿を、幼かった優大兄ちゃんはしっかりと目に焼き付けた。



あたしの名前は「雨美」うみ
双子の妹の名前は「明夜」あや


雨の降る美しい夜明け。


そうしてあたしは「桃井 雨美」になった。





妹はどこにいるかというと、母方のおばさんち。


実は明夜を見たことがない。
1歳の誕生日の写真と、「またあそぼおね」と書かれた明夜直筆の手紙だけ。






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