空へ

軽音部

春が来たッ!

いや、実際に季節は春なんだけど、心が満腹感じ。

あぁ、空が青いね。

今なら空も飛べそうだ。

付き合えるならバイトなんて関係ない。

バンドだろうが何だろうが、何でもしますよッ!



…ってことで、早速バンドの練習。

「じゃあコレ歌ってみて」

目つきの鋭い理沙に歌詞カードを渡された。

曲名… さくら○ぼ

「へ?」

「知ってるでしょ?大○愛」

いや、知ってるけど…。

「良かったね。同じ関西人だよ」

吉倉さん…陽菜が言った。

「いや、ちょー待って!」

理沙が俺にかまわず合図を出す。

「そんじゃ、いくよ!」

陽菜と良美がうなずいた。


しばらく沈黙。


「ちょっとあんた!」

沈黙後、理沙が言った。
相変わらず口調もキツい。

「え?」

「この曲、あんたの歌い出しから始まるんだから、歌いなよ!」

「は?」

「…から始まるだろ。まさか知らないの?」

「いや、知ってるけど」

「じゃあ歌いなよ」

命令口調がむかつく。

「あのな、何でよりによってこの曲なん?何で女性ボーカルやねん!ってかキー高いし。ってか声出ねーし。ってか恥ずかしいわいッ!!」

理沙と陽菜がブッと吹出し、腹を抱えてバカみたいに笑った。

「あはははは、悪い悪い、冗談だよ。ちょっと本場のツッコミってのを聞いてみたかっただけ」

理沙は人の肩をポンポン叩きながらそう言った。

ハァ?
本場のツッコミって何だよ?
俺、芸人じゃねーよ。

「あはは、怒るなよ。カラオケおごるから」

「カラオケ?」

「そう。あんたの入部の歓迎会をしてあげる。今から行くよ」

そう言って、女3人は部室を出て行った。

歓迎会は嬉しいけど、なんか振り回されてるよな…。

おごりのカラオケ。

この女3人のことだ、必ず何か罠があるに違いない!

もう2回も罠に引っ掛かっているんだ。

今回こそ罠にハマらぬよう、用心してカラオケに付いて行った。



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