空へ
ドアがカチャッと開き、良美が隙間から顔を出した。

よし、822号室で正解だったか!

小さくガッツポーズした。

良美は不思議そうにこっちを見ている。

「あ、いや、悪い。あんな、今なんか陽菜と理沙が二人で相談したい事があるっちゅーて、俺、部屋追い出されてん。やからちょっと暇やし、中入れてくれへん?」

良美はコクッと頷き、部屋へ招き入れてくれた。

「あ、なんか俺の部屋より微妙に広ない?」

いや、値段も同じだし、そんなはずはないんだろうけど、とりあえずお約束のセリフ。

良美に反応なし。

「あ、まぁよく考えたらそーでもないわ」

…って、ダメだ、会話が続かない!

ベッドの横にある椅子に腰をかけると、良美の荷物が目に入った。

「あ、それ、今日買ったやつ?」

良美が頷く。

良美の荷物は、舞浜に来るまでより明らかに増えていた。

「へぇ、何買うたん?」

良美はベッドからピョンと降り、荷物を広げて、俺に見せた。

「あ、この時計、メッチャかわいいやん!」

良美は少しキョロキョロし、内線電話の横にあったメモ帳を持って来て、書いた。

『これはお母さんへのお土産だよ』

「時計が土産なん?」

『お母さんもネズミー好きだからね』

良美がチャットのようにメモ帳に書いていく。

なんか、こんなの前にもあったよなぁ…。
あ、あれか。

初めて陽菜に会った日のノートチャットを思い出した。

「そうなんや、母娘揃ってネズミーマニアなんや」

『マニアじゃないよ!』

少しふて腐れた良美が妙に可愛く、それを見て俺は笑った。

「いやいや、ネズミー好きとしては、マニアって言われた方が嬉しいんちゃうん?」

そう言った俺に、良美は鋭く指摘した。

『なんで私がネズミー好きだって、知ってるの?』

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