空へ
私は即座に言った。


「キモッ!」


「え?」


「お前キモッ!何でそんなにブリッ子なの!?」


「いや、女役を…」


「今どき、そんな女いねぇよ」


「いや、いるだろ」


「はいはい、分かった分かった。じゃあさ、私が今どきの男を演じるから、晴貴は今どきの女を演じて」


晴貴は少し考え、言った。


「今どきの男って、どんなの?」


「そうだなぁ…優柔不断な男かな。優柔不断な男を彼氏に持つ女の子の気持ちが分かれば、今どきの女心ってのが、分かるんじゃない?」


私がそう言うと、晴貴は「分かった」と応えた。


「じゃぁ…晴子」


「はいはい、何?」


「腹減った」


「うん、晴子もお腹すいたぁ。何か食べに行くの?」

そう言う晴貴…

いや、晴子に私は、自分が出せる最も低い声で、ドスを利かせて言った。


「お前が決めんかい!」


即座に晴貴が言う。


「恐っ、お前恐ッ!何でそんなに男らしいの?ってかちょっとハマってるし!どこが優柔不断なんだよ」


「いや、女に決めさせる所が…」


「ぜんっぜん、優柔不断なんかじゃねぇし!」


「え、そう?」


「そうだよ!なんか、こう…」


そう言って、晴貴は体をクネクネした。


「もうちょっとナヨナヨしい男を演じてくれよ!」


「分かった、分かった。ナヨナヨしい男ね」


私はそう言って、また男役を演じた。


「晴子、お腹すいたね」


「うん、すいたね。何か食べに行こうよぉ」


「うん、そうだね。何食べよっか?」


「あなたが決めて?」


「いや、晴子の食べたい物でいいよ」


「えー!?私はあなたが食べたいやつが食べたい」


「俺は晴子の食べたいやつがいい」


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