空へ
ダメダメ言っていると、逆に今度は晴子が私に聞いてきた。


「じゃあ何がいいの?」


「え?何でもいいよ。晴子が決めて?」


「…じゃあ、天ぷら」


「ダメ!油っこい!」


「じゃあ、ラーメン」


「ダメ!熱い!」


晴子は、両手を振って、『演技を中断する』といった合図をした。


「ちょっと待って!ぜんっぜん話が進まないじゃん!優柔不断すぎだろ!」


「え?そうかな?」


「そうだよ!」


「私はただ、身近にいる優柔不断な奴のマネをしてただけなんだけど」


「誰だよ、身近な奴って!」


そう言う晴貴を、私はじっと見た。


「…って、ワォ!俺かよッ!!」


晴貴はそう言って、私の胸元を、手の甲でピシッと軽く叩いた。


「もうええわ!」


直ぐさま、私と晴貴は二人揃って、頭を下げながらハモった。


「ありがとうございました」




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