空へ

珠希の過去

私は、卒業した東京の大学で仲良くなった友達のヨッシーと一緒に買い物に出かけた。

ヨッシーは私より3つ下の女の子。

歳が離れているにしては、なぜか気が合う子だった。

買い物の帰り、駅前に人だかりが出来ているのが見える。

「ヨッシー、あれ、何だろう?」

ヨッシーは物静かな子だが、いつもよりさらに小さな声で言った。

「あれ、私の彼氏…」

ヨッシーが『あれ』と指差した先には、人だかりの中央でギターを弾いている男がいた。

「え?あれがヨッシーの彼氏なの!?そういえば昔、ヨッシーも音楽やってるって言ってたよね」

ヨッシーは小さな首を小さく縦に振った。



ヨッシーの彼氏が歌ってる最中、私は涙を流していた。

歌詞が晴貴とカブる。

晴貴は、死んだ…。

晴貴はバスの運転手だった。

鮮明に覚えているあの日の出来事…。

歌を聞いていると、その記憶が、頭の中でビデオテープのように再生された。

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