空へ
また晴貴の事を思い出してしまって、自然と涙が頬を通った。

「え?ちょっと、キミ、大丈夫!?」

涙に驚いた彼氏が言った。

「なんや、ものすごい悩んでる感じやな。俺で良かったら悩み聞いてあげるで。これでも俺、声が出なくなった少女を、声が出るように治した経験があるねん」

隣で聞いていたヨッシーが、ビッと彼氏の胸を手の甲で軽く叩き、馴れない大阪弁で言った。

「ダレガ少女ヤネン!」

「あはは、良美、突っ込みウマなってきたやん。…ってそんなことより、ホンマどうしたん??」

底抜けて明るい感じの彼氏。なんか、いいなぁ。
ヨッシーが羨しいなぁ。
でも、私も彼氏がいたんだよ?
カッコ良くはなかったけど、煙草プカプカ吸うけど、優柔不断だけど、それでも面白くて、すごい優しくかったんだから。

…って、あーダメッ!また涙が出てきた。

心配そうにヨッシーと彼氏が、こっちを見ている。

「ちょう、ホンマ大丈夫??」

「うん、大丈夫。ちょっと昔を思い出しただけ」

「良かったらホンマに話聞くで?」

ちょっぴり嬉しいかな。
悩みを打ち明けれる友達なんていなかったし…。

私は、今までの出来事を話すことにした。

昔、漫才師をやっていたこと…。

漫才の相方の家庭事情で漫才をやめることになったこと…。

漫才の相方、晴貴と付き合うようになったこと…。

晴貴がバスの運転手になったこと…。

同期の漫才コンビが売れていくのを悔しがって、晴貴が朝方までやけ酒したこと…。

そして、そのまま仕事に行って、衝突事故を起こして死んだこと…。



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