空へ

目覚めると、私は病院の一室にいた。

｢あ！たまちゃん！｣

私が寝てるベットの横には、ヨッシーがいた。

｢ヨッシー…｣

私、どうしたんだっけ？
なんで、病院で寝てたんだっけ？

｢努君、たまちゃんが起きたよ！｣

部屋の隅には、ヨッシーの彼氏が立っていた。

｢お、目ー覚ましたか。良かったわ｣

ヨッシー…。
そうだ！
私は夜道で泣いていたら、誰かに殴られたんだ！
ヨッシーに殴られてるんだと思ってたけど、そうじゃなかったんだ…。

｢ヨッシー、ごめん…｣

私は、謝った。
ヨッシーを疑ったこと…
いや、晴貴の事も含め、謝った。

｢ごめん…ごめんね｣

また涙が出て来た。

｢ちょっと、たまちゃん！…なんで謝るの？たまちゃんは何も悪くないのに！｣

｢ヨッシー…｣

ヨッシーの彼氏が、近付いて来て、私に言う。

｢そうやで。キミはなんも悪うないわ。昨日は怒ったりしてごめん｣

ヨッシーの彼氏は、そう言って頭を下げた。

｢俺、あれから良美に言われたんやわ。たまちゃんの彼氏が憎いからって、それでたまちゃんと彼氏をダブらせて恨むのはおかしいって…そんな事しても、陽菜は喜ばないって…。それに、たまちゃんの彼氏の気持ちも、分かるねん。ずーっと打ち込んでいた夢を、家庭の事情でやめてしまって、周りにいた仲間が夢を叶えていったりしたら、俺かて同じ状況でも、やってしまうかもしれへん…｣

ヨッシーの彼氏の目から、涙がこぼれた。

｢それに、良美｣

彼氏から名前を呼ばれたヨッシーは、顔を上げて彼氏を見た。

｢俺、やっと気付いたわ。もうこの世にいないたまちゃんの彼氏を恨んで生きて、いつまで俺は昔の彼女の面影を追って生きてるんやろな。今の彼女は良美、お前やのに…｣

｢努君…｣

ヨッシーは、そう呟いて泣いた。

そういえば、彼氏が歌を歌っていた時、泣いて聞いていた私の隣りで、ヨッシーも泣いていた。
いつまでも昔の彼女に勝てなくて、悔しかったんだね、ヨッシー…。