空へ
働いていたお店がなくなって、私は1ヶ月ブラブラと過ごした。

働いていたお店ってのが、ニューハーフバー。

そんな私はやっぱり、オ・カ・マ。

お店ではマナって呼ばれてたけど、本名は、本郷優太郎っていう、男らしい名前。

そんな男らしい名前だけど、私、可愛いのよ。

自分で言うのもなんだけど、街中を歩いていたら、よくナンパされるの。
もちろん男によ。
私の声ってまだ発展途上だから、声を出したら男はすぐに逃げていくんだけどね…。

お店のママは、可愛いから他のお店でもやっていけるって言ってくれたけど、私はそうは思わない。

だって私、可愛すぎて他のオカマ達に苛められるもの。
あのママみたいに、私に味方してくれる人がいないとやってけないよ。

私、内気だしさ…。

別に自意識過剰とかじゃないのよ。

ママのお店の前にも、他のニューハーフバーで働いたことがあるの。

その時、すごく苛められたからさ…。

だからもうニューハーフバーでは働かない!

普通の仕事をして生きていくって決めたの。

オカマやってるとさ、お金がすごくかかるのよ。

服に、化粧に、ホルモン注射に、脱毛に、髪の手入れや、肌荒れも防がないと…。

だから、いい仕事が見つかるまで、仕方ないけどバイト。

ホントはウェイトレスがやりたかったんだけど、面接で落ちちゃった…。
オカマだからって差別するのは良くないわ。
ホント、失礼しちゃう。

だから違うバイトを探してみたの。

今日は、コンビニで面接。

この際、もうバイトなんて何でもいいわ。
1ヶ月ブラブラしたせいで、生活費すら危ういもの。

私は、気合いを入れて化粧をした。

「ウーン、今日も私、び・じ・ん」

これなら、コンビニの面接くらいチョロいでしょ。

…まぁ気合い入れて化粧をしても、面接には関係ないんだけど。



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