空へ
ちょっとビビッた私は、女を無視して、履歴書を店長に渡した。

女も同じように履歴書を渡す。

「えーと、山口さんと、本郷…さん…えッ?」

はいはい、どうせ本郷優太郎っていう名前が私の見た目と違うことに驚いたんでしょ。
こういう面接とか病院とか役所とか、毎回毎回説明するのって、ホント面倒くさいわ。
まぁしょーがないんだけどさ…。

「はい、本郷優太郎です。その履歴書の【男・女】の項目の所をご覧くださいな。男と女の間の点に丸が付いてるはずですから。つまり、そういうことです」

「え…あ…は、はい、分かりました」

店長は、驚きながら私を見た。

オカマバー以外の人間に会うと、これが普通なのだ。
私はいつも驚かれ、そして時間が経つと笑われる。
だからこの店長の反応は普通。

なのに、隣の女は違った。
女は、私にはまるで無関心の様子で、ボケッと天井を見つめていた。




これが

私のかけがえのない存在になる

リッピーとの出会いだった…



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