空へ
「リッピー、目を覚まさないですね」

隣にいる店長にポツリと言う。

リッピーが倒れ、救急車で病院に運ばれてから3時間が経った。

「そうだね。でも、命に別状はないみたいだし、私そろそろ戻ります」

店長はそう言って、ダウンジャケットを羽織った。

「あ、はい。ありがとうございました」

「また、目覚めたらメールして?」

「はい」

「それじゃ」

「お疲れ様でした」

店長がいなくなり、私とリッピーだけになった個室の空間は、しばらく静粛な時間が流れた。

窓から日が差し込める。
今日はいい天気ね…。

ボーと外の景色を眺めていると、喉が渇いて来たので、廊下にある自販機に買いに行く。

部屋に戻ると、リッピーが目を覚ましていた。

「あ、目覚めたのね」

リッピーは起きあがって、ボーと壁を見つめたまま言った。

「ここは?」

「病院よ。あなた、コンビニで倒れたのよ」

私がそう言うと、リッピーはハッと我に返った。

「そうだ、バイト。私、行かなきゃ!」

「ダメよ。今日は安静って、お医者さんが言ってたんだから。バイトは店長が代わりの人を探してくれたわ」

「そう…」

私はイスに座り、リッピーの顔を見た。

「ねぇリッピー。あなたちゃんと寝てるの?」

「寝てない」

「じゃあご飯は?ちゃんと食べてるの?」

「最近食べてない」

医者は、寝不足による過労と栄養失調と言っていた。

「一体何で?」

「バイト、掛け持ちしたから…」

そう言ったリッピーの目は、悲しそうな目だった。

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