空へ

白い4年を越えて

私は家に着くなり、髪の毛を切った。

今まで大切に育ててきたロングヘアーを無惨に切り刻んだ。

「何がオカマになったキッカケよ!」

−バサッ。

「何が好きな者同士しかセックスをしないよ!」

−バサッ。

「何が、良美に裏切られたよッ!」

−バサッ。

全部、私のせいだ。

良美は声が出なくなったんだ。

良美が…。

「私の、私のせいじゃないッ!」

−バサッ。

リッピーの言ったとおりだ。
私は良美を大切にするどころか、深い傷を負わせてしまったんだ。

自分の愚かさに今頃気付くなんて、私は本当にバカだッ。

私はこの6年間、何をして生きてきたんだ。
異常に男が好きって訳でもないくせにオカマになって、深い傷を負わせてしまった良美を責めたりして…。
一体私は、何をしてきたっていうんだ!


私は、自分への嫌悪感を当て付けるように、髪の毛を切った。

気がつくと、前髪は眉の少し上、横は耳まで、後ろは首上まで切っていた。

ふと、鏡を見た。

不整に切った髪の毛…そんなものより、自分の顔に腹が立った。

醜い…。

このアイシャドー。
この口紅。
この眉。
この肌。
この顔…。

全て、良美のせいにして出来た顔…。

私は、洗面所の蛇口を捻り、素手で水を掬って、荒々しく顔を洗った。

こんな事しても、罪が償えないことぐらい分かってる。



良美に謝りたい…。


良美に、謝りたい…。



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