空へ
「良美と努君はこの子を看てあげて。私はリッピーを追いかけるから」

優太郎がそう言ったのが聞こえ、私はさらに逃げ足の速度を上げた。


−ハァハァハァ

いくら走っただろう…。

後ろを振り返ると、優太郎がまだ追いかけて来ている。

良美と努が追いかけて来ていないことに少しだけ安心した私は、たまたま通った公園の中にあるボロボロのベンチに腰かけた。

俯いて頭を抱え込み、さっきの事を思い出す。

なんで、あんな事をしちゃったんだろう…。

私は、狂気に支配されて殴った。
面識のない女の子の顔を、まるでサンドバッグのように…。

自分のした事に恐怖し、体がブルブル震えた。

−ザザッ

靴で砂を擦る音がした。

私は、顔を上げた。

「優太郎…私…」

私がそう呟くと、優太郎は一息ついて私の隣に座った。

二人して、ハァハァと、荒い息を吐く。

暫くの沈黙の後、息を整えた優太郎が言った。

「リッピー、私、努君に殴られちゃった」

私は、優太郎の顔を見た。

頬が微かに腫れている。

「だけど、良かった。謝れて良かった。良美は始め、私だと気がついた時逃げようとしたの。私、必死で良美を追いかけて謝ったわ。昔、相思相愛じゃないとセックスをしないっていう甘ったれた考えがあったことを伝えた。そしたら、良美は許してくれた。その後、良美に努君を呼び戻してもらって、努君にも謝った。努君には殴られたけど、努君も私を許してくれた…」

目を輝かして話す優太郎。

私は、相槌すら打ってあげれない…。

「今度は、リッピーの番よ」

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