空へ
「え?」

唐突なセリフに、私は聞き直した。

「リッピー、突然いなくなるし、様子が何かおかしかったから、私、良美と努君に会話を盗み聞きしてたことを話したの。そしたら、良美が教えてくれたわ。あの女の子…たまちゃんは、バスの事故とは何も関係がないの。たまちゃんは、酔っ払った彼氏を止めようとしたの。だけど、強行する彼氏を止めることが出来なかったの」

え?
なにそれ…。
酔っ払った大宮晴貴を仕事に行かせたんじゃないの?

「私、盗み聞きした後、リッピーになんて言ったか思い出したの。酔っ払って帰って来た彼氏を仕事に行かせた…って。だけどあの、たまちゃんって子は、ただ自分を責めているだけで、ホントは彼氏を止めてたの。仕事を休むように言っていたの!」


仕事を休むように言っていた…?

じゃあ、あの子は悪くないの…?

それじゃ、私のしたことは…

気を失っている相手を殴った私…

しかも、その相手は、私が怨むべき相手ではなかったんだ…。


「あ、あ、わ、私、殴っちゃった…。あの子、殴っちゃった…。5発も、殴っちゃった…」

優太郎達が来なかったら、もっと殴り続けてた…。


自分のした事に気付いた私は、さっきとは比べものにならないくらいの恐怖感…いや、罪悪感に襲われた。


頭が割れそうなくらいの罪悪感…。

憎しみに燃えた心は、後悔という焼け跡を残した。

そして私は、また泣いた…。



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