空へ

懐かしい笑顔と告白

優太郎は、私が泣いている間、ずっと頭を撫でてくれた。

『手当て』という言葉があるけど、優太郎の手の温もりが、頭から心の芯に伝わってきて、救われる思いがした。


「ねぇ、リッピー」

泣いてから15分、私の頭を撫でながら優太郎が言った。

「今度、たまちゃんに謝ろうね」

まるで、聞き分けのない子供をあやすかのように。

私はやっとの思いで頷き、泣きじゃくった声で返事した。

「…ヴン」

私の返事を聞くと、優太郎は「よしッ」と立ち上がった。

「じゃあ、リッピーに私から、大事な話をするね」

「え?」

私は、泣いてボロボロになった汚い顔で、優太郎を見上げた。

「あのね、私…いや、俺は…」

優太郎がそう言いかけた時、私達に近づく人の気配がし、私と優太郎は振り向いた。

「理沙…やっと、会えた…」

良美だった。

私は立ち上がり、咄嗟に逃げようとした。

腕を優太郎に掴まれる。

「リッピー、逃げちゃダメ!」

「優太郎、離して」

「ダメよ!さっき、たまちゃんに謝るって言ったじゃない!いつまで逃げるつもりなの!なんでそんなに自分を責めるの!なんでそんなに臆病なの!そんなのは、そんなのはリッピーじゃないッ!」

「優太郎…」

優太郎は、涙を流していた。

私に対する涙…。

そして、その涙の奥には、強い眼差しがあった。

「もう逃げるのはおしまいッ。情けないリッピーなんて見たくない!」

最後に、優太郎は優しい目をして言った。

「本当は、良美と話したくてしょうがないくせに…」


−パリッ

何かが割れた音がした。

優太郎の最後の言葉は、私の心の奥にある、強い願望…。

割れたのは、私の本心を隠す殻だ…。

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