空へ

優太郎の大きさ

気持ち悪い…。

私は、涙を流した。

「なんだ君、泣いてるのかい?」

心配など微塵にも感じられない、エロい顔をしたオヤジが言う。

私は、何も答えずにオヤジの汚いモノを舐め続けた。

今までこの仕事が、気持ち悪いと思わなかった日などない。

しかし、今日はより気持ち悪いという感情が増大している。

いつもなら、汚いオヤジの汚い手や舌で触れられると、私は感情や意識をどこかへ飛ばし、心を無に出来るのに、今日は違った。

心が、体から離れない…。

なぜだか、優太郎の顔が脳裏に焼き付き、私の心をからっぽにしてくれない。

そして、純粋な優太郎の顔を思い出しては、さらに仕事の嫌悪感が増していき、涙が溢れてきたのだ。

私は、優太郎が好きなの??

自分でも分からない…。

だけど、優太郎とは付き合えない。そう思うと、より涙が溢れた。

この仕事も、今日で終わり…。
今日で終わりなんだ!

心が死なないように、そう何度も自分に言い聞かせた。



午前4時。
デリヘルの店長と別れを告げ、私はタクシーに乗り込み、家に帰宅した。

やっと、あの仕事が終わった…。

これからは、普通に大学に行って、普通に遊んで、普通に恋もして…。

そう思った時、また優太郎の顔が浮かんだ。

恋は、出来ないか…。

ふと、部屋の片隅に目をやった。

ところ狭しと置かれたギターたち。

クラシック・アコースティック・エレキ・アコエレ・ベース…。

私は、クラシックギターを手に取った。

私が一番初めに、親父に教わった曲…。

それは、クラシックギターの『禁じられた遊び』だった。

「親父、どこで何してんだよ…」

気が付くと私はまた涙を流していた。

「あれ?」

ふと、音がいつもと違う事に気付く。

親父の事を思い出しながら手に取ったから気付かなかったけど、いつもよりギターが重い。

ギターを揺らすと、中から音がした。

「なんだろ?何か入ってる」

私は、弦の隙間から見えるそれを、驚愕の目で見つめた。

「え、何、これ…」

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