もう1度~私と先生と桜の木~
「…先生さ、やっぱり先生なんだね」
「はあ?なんだよ、それ」
用意したプリントの1枚目を採点していると奏が言った。
ちなみにこのプリントを終わらせるのに1時間かかった。
普通なら30分もかからないはずなのに。
「っていうか、大人なんだね」
「はあ?」
「なんか気にもしてないし、余裕、って感じじゃん」
いったい奏は何が言いたいのだろう。
採点する手を思わず止めた。
「なんの話か教えていただけますか」
なぜか敬語になる俺。
「…昨日」
それだけ言って奏は黙る。
でも、その一言で十分伝わった。
「知ってたのか」
「うん。だって琴音と小学校からの付き合いなんだよ?」
そう言えばそんなこと前に言ってたっけ。
「奏には気にしてないように見えた?」
コクンと頷く奏。
「そっか。
でも俺、結構気にしてるよ。
っていうか動揺してる」