もう1度~私と先生と桜の木~




「よーたくん?本日のチョコ、いくつですか?」


「人の聞く前にそちらから言ったらどうですか?マッチー」


授業後。

職員室で交わされるそんな会話。


「俺は、これくらい」

紙袋いっぱいにキレイに包装された箱が入っている。


「俺はこれくらい」

町田先生よりは数は少ないが、

それでも1人で食べきるのは大変なくらいの数がある。


どうせ全部、義理チョコだけど。



「この量、食べきれるかな、俺」


「俺は余裕ですけどね」

ふっと笑って紙袋と荷物を持って立ち上がる。


「あ、帰ります?」


「今日部活、ないんで」


「じゃあ一杯どうっすか?」


「…付き合いましょう」


そんなこんなで一緒に職員室を出た俺たち。

職員用下駄箱。


自分の靴箱の扉を開けると


「…え?」

ビニール袋が入っていて。

動きが止まる。


「今どきそのパターン?

すげえ、ベタだな」

確かに最近じゃ滅多にお目にかからない置き場所だな、

と思いながらビニール袋から箱を取り出す。


カードが挟まっていて。


「んーっと?

クサくならないことを願って…


って、なら直接渡せばいいのに。」


町田先生が言う。

でも正直、その言葉は耳に入っていなかった。

だってこの字、俺…知ってるんだもん。







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