もう1度~私と先生と桜の木~
「あ…琴音」
「うわーぁん!奏ぇ!!」
琴音は顔をぐしゃぐしゃにして抱きついてきた。
相変わらず、スキンシップが激しい。
「そんな泣いたらせっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「いいもん!今日は泣く日って決めてるから」
正直、あの告白があった日から
私と琴音はなんだか気まずくなっていた。
でも、付き合いが長いだけある。
そんなことで、簡単に今までのことがなかったことにはならない。
なんだかんだありながらも、
琴音はやっぱり大切な友達なのだ。
「大学行ってもたまには遊んでね」
「もちろん!今度彼氏紹介してよ?」
そして、琴音には彼氏ができていた。
違う学校のサッカー部の子らしい。
写真で見る限りなかなかのイケメンだ。
「おーい!奏ちゃーん!」
「テンション高いね…碧」
人ごみの中、ピョンピョン跳ねながら
ここにいますアピールをする碧。
そんな姿がちょっと面白い。
「ね、一緒に帰らない?」
「ごめん。ちょっと用があって」
「どっか行くの?」
「うん…まあね」
「いつもの場所、でしょ?」
碧の言葉に曖昧に笑って見せる。
でも碧にはこれで十分伝わる。
「じゃあ待ってる。
終わったらケータイ鳴らして」
「分かった。ごめんね」
「いいってことよ!じゃああとで」
颯爽と走り去る碧。
きっと、碧も類と同じく、私の気持ちに気づいてる。
それでも何も聞いてこないのは、
私が何も言いたくないと、分かってるからで。
本当にいい友達を持った。
そうつくづく思う。
このあと、ケジメをつけたら
ちゃんと、碧に報告しよう。
『私、よーたくんのこと好きだったんだ』
って。