もう1度~私と先生と桜の木~
落ち着く場所
『えー…本日はお日柄もよく…』
そんな声が右耳に入りキレイに左耳へと抜けて行く。
あー…眠い。
なんとか欠伸はかみ殺しているが、瞼が重い…重すぎる。
「先生、目開けて」
「あ…うん」
隣に座っていたマッチーこと町田先生に起こされる。
「ホント、手に負えないよ、よーたくん」
「その名前で呼ぶなよー」
そう言うと町田先生はクククッと悪い声で笑う。
よーたくん、とは俺のことだ。
なぜか生徒はみんなそう呼ぶ。
なんだったら俺を『先生』と呼んでくれる生徒は一割もいないかもしれない。
しかもその俺を呼ぶ声を文字にすると
『陽太くん』ではなく『よーたくん』が多分、正しい。
先生として見られてないのかなー
なーんて思うけど。
でも、なんだかんだみんな、慕ってくれてる気がするから。
だから、よーたくん、そう呼ばれることに関して俺はとくに何も言わなかった。
それに先生と呼ばれてないのは
マッチーと呼ばれてる町田先生だって同じだしな。