もう1度~私と先生と桜の木~
「奏、バイトは慣れた?」
「うん。だいぶね」
変態店長に襲われかけてから、もちろんバイトをやめて。
それからバイト先を探したけど、なかなか見つからなかった。
だけどつい2週間前、やっと新しいバイトが決まった。
焼き肉屋のチェーン店のバイトだ。
「そう言えばもうすぐ1年記念だな。」
「え!?もうそんな経つの?」
「そうだよ。
ま、どうせ奏のことだから忘れてたんだろ?」
「…そんなことないもんっ!!」
忘れてなんていない。
ただちょっと、うっかりしてただけ。
「で、ご希望は?」
「んー…とくにない、かなあ。
いつも通りでいいよ」
「いつも通りってなあ…」
困った子だなあ、とでも言いたげなテルくんの顔。
こうしてたまに私を子供扱いするところは少し、好きじゃない。
「よし、じゃあ決めた」
「え?」
「旅行、行こっか」