もう1度~私と先生と桜の木~
「俺…最低なんだ」
「…え?」
「さっき…奏を試した」
私を?…試した?
「奏がまだ、よーたってヤツに気持ちがあるのか試したんだ…」
何も、言葉が出なかった。
鼓動が速くなるのを感じる。
「この1年。
1度も忘れたことなんてなかったよ。
奏がアイツを想ってた、ってこと。
…気持ち悪い話かもしれないけどさ。」
気持ち悪い話なんかじゃないと思う。
誰だってきっと、そうだと思うから。
私がテルくんの立場だとしても、忘れることはなかったと思う。
「本当は少し、自信があったんだ」
テルくんが座ったのが分かった。
「奏がアイツを完全に忘れて、
俺だけを好きでいてくれてる、っていう自信が少しだけあったんだ」
テルくんの声には元気がなく。
それが私のせいなのは明白で。
今すぐ耳をふさぎたい衝動に駆られた。
でも、そんなのダメだ。
私が原因なんだから。…逃げちゃ、ダメだ。