もう1度~私と先生と桜の木~
もしかしたら俺は、自分で思ってるよりも意地悪なヤツなのかもしれない。
「最近、どう?」
「何が?」
「テルくん?…だっけ?」
いかにも自信なさげにその名前を発したが本当はちゃんと覚えていた。
というか忘れられるワケがない。
「…順調、だよ」
…まただ。
また、奏の顔が曇った。
多分、彼氏の話題が出るとどうしてか無意識にそうなるのだろう。
俺はその確信があるというのにあえてその話題を口にして、奏を動揺させている。
ホント、性根が腐ってんな、俺って。
「この間、1年経ったんだ」
…1年。
その年月はあまりに長く。
俺の知らない奏の1年。
奏と彼氏の歴史が詰まった1年。
それを思うと胸が痛くて。
どうしようもなく、むなしくなった。