もう1度~私と先生と桜の木~
「ねえ、そんな楽しい?」
「当たり前!
なんで奏はそんなつまらなさそうな顔してるワケ?」
試験管の中で起る化学反応に目を輝かせる類。
そして私の顔を見た後理解できない、とでも言いたそうな顔をする。
「だって、何がなんだか分かんないんだもん」
「いや、それは奏の勉強不足だろ」
「…うるさい」
それ言われたら何にも言い返せない。
理科、キライだなー
なんて黒板を見ながら思う。
そこにはよく分からない薬品の名前が書いてあって。
飲んだら死んじゃうのかなー
なんてボケッと考えていた。
「あ、よーたくんだ」
でも、その類の声でパッと振り向く。
「え?どこ?どこ?」
「ほら、廊下」
「え…見えないし」
類の指の先には確かに人影はあるけど。
でも、よく見えない。
なんせ相手は向かいの校舎にいるんだから。
「目、いいね」
「まあな」
自慢げに笑う類に
少しイラッとしたことは類には内緒だ。