もう1度~私と先生と桜の木~
「…とりあえず、場所変えませんか。
ここじゃ注目を浴びる」
テルくんの言葉通り、ここは人通りが多く、周りから少し不審そうに見られている。
「そう…するか」
よーたくんは不機嫌そうにテルくんのあとをついて行く。
「ねえ…どうして来たの?」
よーたくんのスーツの袖を少し引っ張って小声で聞く。
「…あ?んなの決まってるだろ」
相変わらず不機嫌そうにチラッと私を見て言う。
「許せなかったんだよ」
「許せなかった…?」
「もうこれ以上は何にも言わない」
「え…何それ」
そうこうしているうちに
住宅街の中にある小さな公園に着いてしまう。
ずっと前を向いて歩いていたテルくんが振り返る。
慌てて掴んだままだったよーたくんのスーツの袖を離す。
「奏の高校時代の先生、ですよね?」
「そう」
「先生はしばらく黙っておいてもらっていいですか。
これは俺と奏の問題なんで。
それから先生の話はゆっくり聞きます」
よーたくんは私たちから離れてベンチに座った。