もう１度～私と先生と桜の木～

「奏、まず先に言っておく。

俺はお前と別れたくない」


「……………………」


私は何も言わなかった。



「勝手なこと言ってるってことは分かってる。

でも、別れたくないんだ。


酔っていたとは言え、俺がやったことは許されることじゃないと思う。

それでも、一緒にいたいんだ。

ずっと、奏と一緒に…いたい」


ああ、どうしてテルくんはそうやって女心をくすぐるようなことを言ってくれるんだろう。

もし、３日前の出来事がなく、ただ


『ずっと奏と一緒にいたい』


そう言ってくれていたなら。

今よりもっと、嬉しいという気持ちがあったと思う。



「…どうすればいいのか分かんない」


「え?」


「別れたほうがいいのかもしれないし、

許したほうがいいのかもしれない。


私には…分かんないよ、何が正解なのか。」


自分でもなんて無責任なヤツなんだろうと、思う。

でも、本当に分からなかった。


自分のことなのに、

別れたいのか、許したいのか、

自分がどうしたいのか。


何一つ、わからなかった。